現在私が修復中のプレイエル・ピアニーノ
製造番号:6720 (1838年製)
ショパンのピアニーノと現在私が修復中のピアニーノとの比較2
プレイエル社の記録をさらに細かく見て、比較してみました。
プレイエル社の工場の記録台帳には、各ピアノについて、各工程が完成した日と仕事をした職人の名前が記載されています。
1. ケース担当
2. 響板担当
3. 張弦担当
4. 鍵盤担当
5. アクション担当
6. 仕上げ担当
7. 大屋根担当
8. 金属担当
9. ニス担当
10. 調律担当
記載のある項目はピアノによっても違うのですが、6668と6720のピアニーノについては、このうち7つの項目について記載がありました。
1. ケース担当
6668=Beckさん
6720=Beckさん
2. 響板担当
6668=Niderreitherさん
6720=Niderreitherさん
4.鍵盤担当
6668=Genlisさん
6720=Pelemannさん
6. 仕上げ担当
6668=Bernierさん
6720=Bernierさん
8. 金属担当
6668=Wuilhorgueさん
6720=Bauryさん
9. ニス担当
6668=Wentsenssenさん
6720=Wentsenssenさん
10. 調律担当
6668=Schindlerさん
6720=Schindlerさん
上記のように、6668のピアニーノと6720のピアニーノでは、7項目の作業工程のうち5項目を同じ職人が担当したことがわかりました。
この比較の結論は、ショパンが購入した6668のピアニーノと現在私が修復中の6720のピアニーノとは中身がほぼ同じ、ということです。
外装は異なりますが、中身の構造は全て同じです。
製造された時期もほぼ同じ、ということは材料も同じだったと思われます。
それに加えて、ピアノ製造を実現させた職人がほとんど同じ担当者でしたので、技術もほぼ同じということになります。
それにしても、179年前のプレイエル社でどのピアノのどの部分が何という名前の職人によって作られたのかを調べることができるなんて、すごいことですね。
(続く)
参考資料:
ARCHIVES PLEYEL (http://archivesmusee.citedelamusique.fr/pleyel/archives.html)
ショパンが実際に買った記録を今でも調べられることが凄いし、そのような歴史を持つピアノメーカ自体が本当に素晴らしいし、なぜ今は廃れてしまったのか、非常に残念です。お金持ちしか買えないような、一品一品丁寧に作り上げたものでは難しいのでしょうね。それにヤマハカワイが機械生産で学校に家庭にばら撒いてくれたからこそ、私などもピアノに接することが出来たわけですし。
返信削除そうですね。フランスの資料には本当に感心しています。フランスの底力とも言えるように思います。
返信削除おっしゃる通り、歴史は流れて、社会は変化し、素晴らしい仕事をしているからと言って永遠に続くわけではないですね。その代わりに時代に合った別のものが出てきて私たちのためになっています。
歴史的遺産から学ぶことができるのも、ありがたいことです。