現在私が修復中のプレイエル・ピアニーノ
製造番号:6720 (1838年製)
比較の結論
ショパンがプレイエルから購入したと記録されているピアニーノ6668と現在私が修復中のピアニーノ6720が、構造も材料も製造技術もほぼ同じだというこの結論は、私たちをワクワクさせるものです。
ショパンがプレリュードを完成させたピアノとほぼ同じピアノを私は今修復しているのです。
修復は、当時の製造の手法を尊重しながらも、現在手に入る材料を用いて行うため、当然ショパンの時代と完全に同じ音色やタッチにはならないでしょう。
しかしながら、まずまず似たような音色やタッチは得られるに違いなく、それは、ショパンが聴いていた音や感じていたタッチのイメージを知るために役立つのではないかと、私は思います。
現代の材料や技術でピアノを修復することに反対する方もいます。
それはピアノの再現にはならないので意味はないという意見です。
しかし私は、やはり消耗品は現代の新しい材料で修復しなければ若々しい音やしっかりとしたタッチは得られないと思いますし、そうしなければ楽器として使用に耐えるものができないと考えます。
修復が中途半端でショパンの音楽を奏でた時に音楽にもならない、というのでは意味がないと思います。
どちらにしても、時代も空気も人の技術も何もかもショパンの頃とは異なる現在の環境で、完全な楽器の再現はできないのですから、私たちができる範囲できちんと修復し、音楽を奏でる中で何らかのイメージを得ることができるのなら、それは現代の私たちにとって意味があるのではないでしょうか。
そしてショパンから私たちへのメッセージを知ることができる方法の中の、少なくとも一つにはなり得るのではないかと私は思っています。
考え方はそれぞれですし自由ですが、私はこの比較を通して、ショパンの弾いたピアノにかなり近いピアノが縁あってはるばる日本の私のところへやってきたのですから、何としても修復を成功させてみなさまに弾いていただきたい、楽しんでいただきたい、という思いを今新たにしています。
(終わり)
メーカは廃れても、遺された楽器が少しでも現代でも使える楽器として蘇るという事は、どこか救われます。真に価値有る仕事と思います。オリジナルがどうであったかの検証と記録とは責務と思いますが、復元が同じ技術や材料でなくても、それはやむを得ないと思います。
返信削除ありがとうございます。賛同してくださる方がいることは励みになります。
返信削除引き続き頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。明子