フランス・パリのピアノ修復工房で10年半働き、帰国して東京で仕事を始めたピアノ調律師です。 パリで知った戦前のフランスピアノの魅力を日本の皆様にもお伝えしたいと考えています。 このブログでは、ピアノ調律師として、修復師として、また一人の人としての日々の活動をご紹介していきます。
2019年4月19日金曜日
1838年製プレイエル ピアニーノでホームコンサート
1838年製プレイエルのピアニーノで行われたホームコンサートを聴いてきました。
ピアノを囲んで少人数が耳を傾ける温かい雰囲気の中、このピアノについてのお話を交えながら瀬尾真喜子さんによる演奏が行われました。
私は、あらためてこのピアノの優しい音と表現力に感動し、心地よい音楽を楽しませていただきました。
途中、現代のスタインウェイのグランドピアノでの演奏も行われ、音や雰囲気の違いを感じることもできました。
スタインウェイは、音量もありダイナミックさも表現力もあり、ピアノの王様でした。
最初はこのピアニーノのような華奢なピアノを作っていたピアノ職人たちとその子孫が、もっともっとこんなピアノが欲しい!と夢を追求し、実現させていった先に到達した楽器です。
そして作られる音楽の幅も広がり、技巧的な演奏も可能になり、我々は多くのものを得ました。
ただ、現代のスタインウェイで弾いたショパンと1838年製のピアニーノで弾いたショパンを比べると、やはりどうしてもピアニーノの方がショパンの音に聴こえます。
この時代の楽器から生まれた音楽だから、そしてこの楽器がショパン時代を記憶しているから、当時を知らない私たちに雰囲気を再現して伝えてくれるように思います。
現代のピアノに慣れた私たちの耳には、音が小さく細く、響きがもやもやしてはっきりしないように聴こえますが、ショパンの時代にはそれがピアノの音でした。
「もやもやの響き」込みで作られた音楽だったのだと思います。
当時、音楽とはとてもロマンチックなものだったのです。
コンサートの後は、プロのお菓子職人の美味しいお菓子をいただき、参加者の皆さんで歓談して楽しい会でした。
ピアニストが舞台上で演奏し観客は拍手をして帰る通常のコンサートとは違ったサロンコンサート、主催者は大変ですが、音楽を楽しむための自然体の形で、とても良いなと思いました。
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