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アクション修理を終え、ピアノはお客様宅へ帰って行きました。
今回の修理について初めは、小さなピアノだからそんなに良くはないだろう、と想像していたのですが、修理を進めていくうちにびっくりの連続でした。
アクションは非常に良く作られており、57年経っても変形が少なく、意外にも修理が楽でした。
材料の良さと誠実な仕事のおかげだと思います。
また、音が出るようになりびっくりしたのは、小さな響板を持つ小さなピアノなのに、とても豊かな音量と音質、表現力も高いのでした。
今の小さなピアノ(どのメーカーでも)に比べて57年前のこの質の高さはどういうことなんだろう、と考えてしまいました。
昭和34年、日本がまだ高度経済成長期に入る前は、もの作りは職人の仕事として丁寧に行われていた時代だったのだなあ、と思いました。
景気上昇とともにピアノがどんどん売れるようになり、大量生産型のもの作りが始まると、丁寧な仕事がおろそかになり、別の価値観の中でもの作りが進んでしまったのだと思います。
昭和34年、戦後のこの時期の、例えばフランスのピアノと比べると、日本のピアノの方が優れており心のこもったピアノが作られていたことを、私は初めて知りました。
このヤマハような丁寧な仕事は、フランスのピアノ界では戦前で終わってしまっています。
私がまだ産まれる前、戦後10年ほどしか経っていない、それほどみんなが豊かではなかった日本で、昔からの職人のもの作りの心を大切にしながら真剣にピアノを作っていた日本人のことを、このピアノ修理を通して感じることができ、幸せでした。
そして今も現役、まだまだエネルギッシュに歌えるこのピアノが、これからも所有者様とともに音楽を奏で続けてくれますように。
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