フランス・パリのピアノ修復工房で10年半働き、帰国して東京で仕事を始めたピアノ調律師です。 パリで知った戦前のフランスピアノの魅力を日本の皆様にもお伝えしたいと考えています。 このブログでは、ピアノ調律師として、修復師として、また一人の人としての日々の活動をご紹介していきます。
2015年11月29日日曜日
1843年製プレイエル スクエアピアノ やり直し
1843年製PLEYEL スクエアピアノ
タッチの調整をする中で、本当にこれでいいのだろうか、もっと連打が良くできる調整はないものだろうか、と悩みました。
シングルアクションなので、多くの選択肢はなく、やはりスプリングの役割(ジャックを元に戻すためのスプリング)が大きいのかなと思い、スプリングを2度作り直しました。
そのたびに少しは機能が上がりましたが、劇的に改善することはありませんでした。
今回、真鍮製をやめて鋼鉄製のスプリングに換えました。
三度目の正直で素晴らしい改善を夢見ましたが、やはり少しだけの改善に終わりました。
こんなところで満足しなさいということなのかな、と思ったところです。
弾いてみて、まあ問題なく弾けます。
けれど、もっともう一歩と連打の可能性を求めてしまうのは、ダブルアクションを知る者の感覚だからかもしれません。
昔の人は、このようなシングルアクションを改善しようと、研究に研究を重ねてダブルアクションを発明しました。
シングルアクションからダブルアクションに移行したとき、得たものはすごく大きかったけれど失ったものも少しあったようです。
シングルアクションでは、連打は出来にくいけれど、指と弦との距離感が近い感じがし、よりダイレクトに指の感覚を音に伝えられるという利点があると思います。
何を優先するかは個人の自由ですが、何かを取れば何かを失う、すべてを得ることはできない、と思いました。
このピアノの持つ最高の可能性を引き出せたら良いと思います。
果たしてそれがどこにあるのか、私は到達できたのかできなかったのか、まだ判断しきれておりません。
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