2018年10月1日月曜日

1838年製プレイエル ピアニーノ 修復後の考察9

ショパン時代のプレイエルのハンマーフェルト修復について考察されたDI MARIOさんの論文の翻訳を、ご紹介しています。
原文はこちらです:PDF of Pleyel Hammers in the Chopin Era

ここに掲載している文は私の個人的な翻訳文ですので、間違いや下手な翻訳、下手な意訳もあると思います。
それでも参考になればと思いますので、恥ずかしながら敢えて掲載するものですが、英語を読まれる方は、ぜひ原文で読まれることをお勧めします。
また、原文にはハンマーフェルトの写真も載っていますので、ぜひご覧になると理解が一層深まります。


アンリ・パープと、ショパン時代のプレイエルにおけるハンマーの巻き方について彼が貢献したこと
M. DI MARIO, VARESE, 2012年7月(2016年6月改訂)

7. 可能な限りの代用品としてのモダン工業ピアノフェルト

ハンマーを巻くために専用に作られたモダンフェルトは、ロマン派の時代のピアノには不適切である。モダンハンマーは分厚い一枚のシートから作られ、密度が高く、木製の芯の上に圧力をかけて曲げられた比較的硬いものである。フェルトにかなりのテンションをかけ圧縮をする方法で作られる。1セットの新しいハンマーを取り付けるとき、技術者はハンマーの表面の繊維を柔らかくするためにフェルトに針を刺さなければならない。そうしなければハンマーは硬すぎて、音色に幅が出ない。

昔のショパン時代には、ハンマーはそれとは違い、根本的に調整されていた。外側の層は柔らかく、それはピアニッシモとメゾフォルテの音色、衝撃音、高音部の音色、そして倍音にも影響していた。それとは別に内側の層は、芯に向かって徐々に硬くなっており、メゾフェルテやフォルティッシモの音に影響していた。

モダンハンマーフェルトは、大きなテンションをかける方法で作られており、そのテンションに耐えられるように、繊維が一方向に大まかに揃えられている。

パープスタイルと1850年代のフランスの白色フェルトは、別の方法で作られていた。強く縮れた繊維を使うため、よりランダムな方向にフェルト化されたのだ。当時のハンマーフェルトとダンパーフェルトの違いは、ハンマーフェルトの方が2倍または3倍の密度を持っていたことであった。

著者は、新しいハンマーフェルトを探し求めて、1783年に創業した優秀なピアノフェルトメーカーであるWurzen Filzfabrikにコンタクトを取った。可能な限り似たフェルトを得るために、オリジナルフェルトのサンプルを工場の技術者に送った。その返答は、完全に同じものを彼らの工場で製造することはできないが、ダンパーフェルトの中でとても近いと思われるものがあるとのことだった。

残念なことに、新しい羊毛のフェルトの音は、ピアニッシモ、メゾフォルテからフォルティッシモでオリジナルに近かったのだが、音色が鈍く、「繊細なエネルギー」に欠けるものであった。

挿入写真:プレイエル10941のハンマー、17905のハンマー、Wurzenのモダンハンマーの一片

上の写真は、1840年代のパープ・プレイエルのオリジナル灰色ハンマーフェルトと、1850年代のプレイエルの羊毛ハンマーフェルトと、新しいWurzenのフェルトとを比較するものである。新しいフェルトが分厚い繊維から作られており、縮れ具合が弱くて緩いフェルトだということがわかる。

著者は、多くのヨーロッパのフェルトメーカーにコンタクトを取った。そのうちの何社かはピアノフェルト製造の業者である。受け取った全てのサンプルの中で、Wurzenのフェルトが昔のフランスのパープ・プレイエルフェルトに一番近いクオリティーを備えていることがわかったが、これまで述べてきたような必要条件を満たすものではなかった。

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