2018年9月29日土曜日

1838年製プレイエル ピアニーノ 修復後の考察7

ショパン時代のプレイエルのハンマーフェルト修復について考察されたDI MARIOさんの論文の翻訳を、ご紹介しています。
原文はこちらです:PDF of Pleyel Hammers in the Chopin Era

ここに掲載している文は私の個人的な翻訳文ですので、間違いや下手な翻訳、下手な意訳もあると思います。
それでも参考になればと思いますので、恥ずかしながら敢えて掲載するものですが、英語を読まれる方は、ぜひ原文で読まれることをお勧めします。
また、原文にはハンマーフェルトの写真も載っていますので、ぜひご覧になると理解が一層深まります。


アンリ・パープと、ショパン時代のプレイエルにおけるハンマーの巻き方について彼が貢献したこと
M. DI MARIO, VARESE, 2012年7月(2016年6月改訂)

5. アルフレッド・ドルジュと彼の青色フェルト

これまで述べてきたように、1850年代の初め頃には、大多数のピアノに細かい繊維の羊毛から作ったハンマーが使われていた。注目すべき例外の一つに青色ハンマーと呼ばれたアルフレッド・ドルジュのハンマーがあったのだが、それはウサギのフェルト対羊毛のフェルトの適性の違いにスポットを当てたものであった。

アルフレッド・ドルジュは、モダンピアノハンマーを作るための工業プロセスの発明家であった。長い木片に圧縮した1枚の幅広いフェルトを巻き、そこから切り出して一つ一つのハンマーを作っていくやり方である。時にはそれに加えてアンダーフェルトの層を巻く場合もある。ドルジュのプロセスが特許を取る前は、ハンマーは1つ1つ層ごとに手作りされていた。

ドルジュはウサギのフェルトの質の高さについて今一度紹介しているのだが、それが下の記事に述べられている。

挿入記事:Music Trade Review、1895年
「フェルトの作り方のプロセスについて細かく記述することは限られたスペースでは不可能だが、最先端のピアノメーカーたちから高い評価を受けているドルジュ社の最新の製品「青色フェルト」についてコメントを求められているので、ここで少し述べることは悪くはないだろう。
この特許のハンマーフェルトは、コニーの毛から作られている。コニーというのは南フランスに生息する小さいウサギのことである。毛の色は青で、繊細な材質であり、大変丈夫で弾力性がある。「青色フェルト」はドルジュの工場で作られている他のピアノハンマーフェルトと同じ方法で処置されている。これら最新で最良のものは、この産業における最も持続性の高い結果を示している。それらは両側を、段階的に16分の1インチの深さまで白いフェルトの中に織り込まれるが、この2つのフェルトは微妙に結合している。
楽器にとって青色ハンマーフェルトの特色がどのように生かされているのかを検証することが必要である。質の悪い白色フェルトを組み合わせに使う場合、たちの悪い、硬い、金属的な音になるが、青色フェルトを使う場合はこのようなことはない。繊細な素材を使うことによって、音を調整するために針を刺して弦に当たるハンマーの表面を等しくなめらかにする作業を減らすことができる。
その弾力性と寿命は、強さと耐久性と合わせて、破損や消耗に対して非常に強い。
ドルジュ氏はフェルトの改良において成功を収め、多大な信頼を獲得した。事実、彼はフェルト製作の全体的なプロセスにおいて革命を起こし、それによって今日我々が知っているアメリカピアノの音色の改良にたいそう貢献した。
ハンマーを巻くフェルトについて付け加えると、ドルジュ氏は、他にも摩擦や磨きに対して強いフェルトを靴の製造に使うフェルトとして製造している。そちらは現在ダニエル・グリーン&Coの経営によりドルジュグループの大きな工場の一つとなっている。」

挿入記事:Music Trade Review、1894年
「注目を浴びているアルフレッド・ドルジュの青色フェルトの新しい特許は、多くのより高いクオリティーのために同業者に熱心に追いかけられている。ドルジュ氏のフェルトが有名になった理由には次の事柄が考えられる。スクエアピアノの時代には、屋根を上げてすべての音が出てくるようになっていたので、音をソフトにするためにテノールと高音部ではハンマーにシカ革が巻かれた。しかしアップライトピアノが使われるようになると、もっと輝きのある音が求められるようになり、シカ革はフェルトのみのハンマーに替わった。しかし羊毛は目が粗く、より耐久性が高くなおかつ輝きのある音を出せる材料を得るために我々は努力した。それが、羊毛にコニーのフェルトを織り込んだこの特許の青色フェルトである。コニーはシカ革と同じ材質を備え、とても繊細で羊毛と結合させるとこれまでに使われてきたどんなハンマーよりも強度の高い結果となるのだ。このフェルトのもう一つの有利な点としては、このように巻かれたハンマーは調整が簡単で、針で刺された羊毛のハンマーよりも音のクオリティーを長く保てることである。」

挿入写真:20世紀初頭のスタインウェイピアノに付けられたウサギの毛のハンマー、Allen WRIGHT提供

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