2018年9月23日日曜日

1838年製プレイエル ピアニーノ 修復後の考察1


1838年製PLEYEL pianino 1m15(ショパン時代のプレイエル)
修復後の音をYoutubeで公開した際に、この修復についてのご批判とアドバイスをいただきました。
こちらの動画のコメントに書かれています。

この批判を簡単にまとめると、私の修復したピアニーノの音が「ショパン時代のプレイエルの音ではない」ということと、「音が汚い」ということ、そして「現代風の修復方法(特にハンマーの材質による)が間違っている」ということでした。

一生懸命修復した仕事を批判されたとは言え、この方達も真面目にアドバイスをくださっているわけなので、私も少し勉強をしようと思い、ショパン時代のプレイエルピアノのハンマーの修復についてDI MARIOさんという方が書かれた論文を読んでみました。
それは、ショパンが生きていた当時のピアノ製造界で、ハンマーフェルトをめぐってなされた試行錯誤とその結果発展していった経緯を当時の特許や評論の記録から検証し、そして今その時代のプレイエルを修復する時にどうしたらその時代に忠実に修復できるかを考察しているもので、とても興味深い論文でした。

そのようなことを考えていらっしゃる方たちから見れば、私の修復は確かに現代風の修復です。
その中でも、私自身は当時の設計や考え方を尊重した修復をしようと試みているつもりですが、使う材料は現在手に入るものでまかないますし、あまりマニアックにこだわると修復後のピアノの値段が高くなってしまうので、修復ピアノを広くみなさまに知っていただきたい、お金持ちの世界だけのものにしたくない、という気持ちから、こだわりすぎるのはやめています。

今後自分はどのような修復をしていくのか、結論はすぐには出ないのですが、彼らの主張する修復と自分の修復とでは、目的が違うことはわかります。
ショパン時代の音を再現したい彼らと、ショパン時代の音の再現ではなくショパン時代に製造されたピアノが今生きる音を聞きたい私の間にはズレがあります。
私にとっては、このピアノの音も「プレイエルの音」であり、「ショパン時代とその後を生きてきたプレイエルの音」であり、「ショパンを知っている、ショパンの音楽を歌ってきたプレイエルの音」です。
そしてその音が現代人の私たちに訴えるものがあり、それをとても大切にしています。
ただ、もっと細かく捉えてヨーロッパ人としてヨーロッパの歴史的遺産を真面目に修復している彼らにとって、「間違った」プレイエルの音を広めないでほしい、という主張があるのも、理解はできます。

私は、彼らの主張に全面的に賛成して自分の修復方法を変えることはしないのですが、せめて、このような考え方があるということを日本の方にも知ってもらうために、論文の翻訳をご紹介しようと思います。
日本の専門家の方たちはすでに知っていることかもしれませんが、多くの一般人は知らないと思いますし、翻訳家ではない私の翻訳ですから間違いや下手な訳も含まれますが、興味のある方に少しでも参考になればと思います。
私のノートで12ページにわたる翻訳になりました。明日から少しずつ掲載していきます。
原文はこちらです:PDF of Pleyel Hammers in the Chopin Era

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