2014年10月23日木曜日

パープの歴史 その8

 
1845年PAPEによるデッサン
'NOTICE SUR LES INVENTIONS ET LES PERFECTIONNEMENTS DE H.PAPE '
(Gallica.bnf.fr/Bibliothèque nationale de Franceより) 
 
 
パープが生涯こだわったアクションの形があります。
それは、グランドピアノやスクエアピアノで弦の上からハンマーが叩くアクションです。
彼は、ハンマーが弦の下から叩く場合、ピン板と響板のつながりを切ってハンマーの通り道を作らなければならない、ということに問題を感じていました。
その場所を切る必要がなければ、弦長いっぱいの大きさの響板が取れ、音量が失われずに済むということ、そして楽器の強度も増すという考えです。
加えて、重力を利用した上からの打弦の方が弦に与える負担が少なく、より美しい音色が得られると、経験上わかったそうです。
ただ、打弦した後にハンマーを上に戻すシステムにおいて、満足のいくものに到達するのはとても難しかったそうです。
彼は、このタイプのアクションだけで20種類以上の試作品を作りました。
何年もかけて何度も何度も作り直し続けたのです。
 
試行錯誤の過程で、彼は一音に付き4本の弦を持ちハンマーが上からと下から2本ずつの弦を叩くという形のアクションを備えたピアノも作ってしまいました。
その結果、どうしても上から叩く方が音が良いとの結論に至り、その後は下からのアクションをやめ、上からのアクションをさらに追究していきました。
 
彼のこのアクションがどこまで製品化され、世に広まったかはわかりませんが、最終的に世界中のピアノ製作界では下からのアクションが選択され残ってきた事実があります。
このことから、彼の懸命の研究は成功には至らなかったと言えます。
しかしながら、彼の探究心と情熱、数多くの試作品を作り続ける忍耐力には頭が下がります。 
 
 
参考資料:'NOTICE SUR LES INVENTIONS ET LES PERFECTIONNEMENTS DE H.PAPE '(1845)

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