2014年10月7日火曜日

1844年製パープ コンソールピアノ 不思議な発想 補足



 
先日書いた記事「1844年製パープ コンソールピアノ 不思議な発想」http://francepiano.blogspot.jp/2014/09/1844_23.htmlの中で、
弦と響板の間に支柱や鉄の補強バーを配置した理由について、私は薄いデザインのケースの中に収めたかったためだと理解し、書きました。

その後、資料を探し、1845年にパープ自身が書いた文章
'NOTICE SUR LES INVENTIONS ET LES PERFECTIONNEMENTS DE H.PAPE 'を読み、私は自分の考えが甘かったことに気づきました。

パープ自身の説明によると、楽器を通常のコンソール(小テーブル)以上の大きさにしないことにこだわったことも確かですが、弦と響板の間に支柱を配置したもう一つの大きな理由は、弦の張力が響板を押さえつけてしまう従来の配置をこのように変えることで、逆に張力が音を良く鳴らすために働き、さらには長い目で見て楽器の強度を増すことにもなる、とのことです。

つまり、弦の張力と響板の柔軟性との関係を考えたのだと私は解釈しました。
響板がより自由に振動するしなやかさを保つために、その配置が有効だということ。
そして長い目で見て楽器の強度を増すことにもなるというのは、張力とケースの力関係を考えたものだと思うのですが、全体の張力が長い間にはケースを歪ませてしまうのを、その配置なら避けることができるという意味ではないか。

私は設計の知識がなく、実際に各部品の力関係がどのように相互作用するのかは解らないため、この考えを評価することができないのですが、この小さなピアノを作るのにそこまで考えて完璧な楽器にしようとしていたパープさんの熱意には感激しました。
ただデザイン的な目的でそうしたのだと簡単にわかったつもりになっていた自分を反省し、失礼いたしましたとパープさんに謝る気持ちです。

パープは、狭いアパートにも置きやすい小さなピアノ、家具としても調和するピアノを目指し、様々な形のピアノを作ったのですが、ただ外見だけを考えたのではなく、小さくしても楽器としてのクオリティーを損なわないこと、音量を犠牲にしないことをいつも考えていたようです。
そして、数知れないほどの試作品を作り、改良に改良を重ねていく、その熱意と忍耐力に私は、尋常ではない人間を感じます。
彼は妥協を許しません。
1845年の時点で、この点はまだ改良の余地がある、この楽器にはまだ完全に満足していない、この点はもうすぐ解決しそうだということを色々と書いています。
コンソールピアノについては、基本構造から詳細まで物足りなさを感じないところまできた、と言っているので、試行錯誤中だと言っているグランドピアノやスクエアピアノに比べて、この時点でかなり満足のいくものが出来ていたようです。

2 件のコメント:

  1. どんな音が出るのか…設計者の意図を読み解くと、ますます楽しみになりますね。

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  2. ありがとうございます。私もわくわくドキドキで、とても楽しみです。明子

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