2014年3月14日金曜日

エラールの歴史 その15

交叉弦・総鉄骨
 
平行弦・組み合わせ鉄骨
 


エラールの歴史 その15

19世紀の後半、鋳物で作られた一体型の総鉄骨が発明され、世界のメーカーがみな交叉弦・総鉄骨に移行していった中で、エラールはいつまでも平行弦・鉄のバーと板との組み合わせ鉄骨にこだわっていた。
エラールのこだわりは何だったのか?

ピアノ研究家のルネ・ボーパン氏は、歴史の中に二つの流れ=二つの価値観の違いを見ている。
1.新しい価値観=交叉弦・総鉄骨
  スタインウェイを始めとし、世界中のピアノメーカーがモダンピアノに求めたものは、大きな音、強い低音と輝かしいキラキラした高音、均一な音色+安く作れる鉄骨(鋳物の総鉄骨)
2.伝統的な価値観=平行弦・組み合わせ鉄骨
 
  エラールがこだわった音は、明確ではっきりしていて繊細な音(チェンバロからの流れ)、低音から高音まで変化のある音色(オーケストラの音を実現できるピアノ)+軽い鉄骨(組み合わせ鉄骨)

エラールのこだわりは、フランスの伝統的なピアノ奏法にも通じている。
フランスの弾き方は、「力で弾かない」「真珠のような音を出すような弾き方」
それに対してモダンピアノの世界では、エネルギッシュであること、大きな音量と速さ、かたいタッチが求められる。

エラールが大きな音量を求めなかったことは、コンサートグランドピアノの大きさにも表れている。
エラールのコンサートグランドピアノは、2m60を超えなかった。
エラールは、2m60を超えると伝統的なクオリティーを失うと考えていた。
世界のピアノメーカーが作ったピアノの大きさを比べると、
エラール=2m60
スタインウェイ=2m74
ベヒシュタイン=2m74
プレイエル=2m78
ガヴォー=2m80
ベーゼンドルファー=2m90
ファツィオリ=3m08

結局、エラールも平行弦を廃止して交叉弦・総鉄骨に移行するのだが、やはりエラールの目指したエラールらしいピアノは、平行弦で実現されたのだと思う。
自分で平行弦のエラールを修復することで、何かが見えてくることを願いつつ、果たしてオーケストラの響きを実現できるピアノができるかどうか、確かめてみたいと思っている。

参考資料:Runé BEAUPAIN著 'LA MAISON ERARD - manufacture de pianos 1780-1959'


 
 

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