2022年2月24日木曜日

1842年製エラールのスクエアピアノ完成

 

お客様からの依頼により昨年から修復していた1842年製エラールのスクエアピアノが、予定より大幅に遅れてようやく完成しました。
昨年11月には完成すると思っていたのですが、甘かった、と反省しております。
いつも思うことですが、1800年代のピアノと1900年代のピアノの修復は全く違い、特に1800年代前半ともなると、思いもよらないところで苦労が続き、大変な時間がかかります。
今回のピアノもそうですが、本体の大変な作業が一通り終わったのであとは大丈夫だろうと思ってから、苦労がまた長く続きました。
何度もやり直し、手直しが続き、もう出来るだろうと思ってもまた問題が発生し、解体してやり直し、などということを延々とやっていました。

1800年代のピアノを修復するとき、やっている最中は、もうこんな古いピアノの修復はやめよう、これを最後にしよう、と思うのですが、完成して音色を聴くと、その圧倒的な魅力に苦労も忘れ、また修復したくなってしまいます。
古いピアノの修復が大変なのは、やはり木材が老化しているからですが、その音色の魅力もまた、木材が年齢を重ねたことによるものだと思います。
材料が弱っているからといって何でも新しくしてしまえば良いというものではなく、老化した材料をどこまで活かして修復できるのか、しかし同時に、この先長く使用に耐える楽器として甦らせなければ意味がないので、無理だと判断した場合は新しく作り替える、といった判断も必要で、その判断を迫られる場面が、古いピアノの修復では何度も何度もやってきます。
そして最後まで、果たして自分の判断が正しかったのか、という疑問は消えません。
完成した音色を聴くときでさえ、音色に感動して、あーこれで良かったなと思いながらも、頭のどこかで、もっと良いやり方があったのかも、と思ったりします。
けれども、その時の自分ができる限りの仕事をした結果ですから、良しと受け止めなければなりません。
完璧はあり得ない世界、答えのない世界で仕事をしながら、人生についても同じことが言えるのかもしれないなと、学ぶ毎日です。

1842年製ERARD スクエアピアノの音色


この後は、ずっとストップしていた1857年製エラールのグランドピアノの修復に戻ります。

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