2019年11月7日木曜日

1945年製ガヴォー クラポー 修復を終えて


フランス・トゥールのお宅で


1945年製GAVEAU  モデル・クラポー(小型グランド1m33)
修復を終えて

通常、製造から何十年も経っていて、かつ外国の所有者が手放したピアノを修復するとき、そのピアノが生まれてから今日までの歴史を知ることは殆ど不可能なのですが、このピアノに限っては、私が個人的に前の所有者を知っているため、全てを知ることができました。

1945年6月28日、フランス人のムシュブフ氏がガヴォー社からピアノを購入し、パリ東の郊外のフォントネー・スー・ボアという街にある学校の教員宿舎に運びました。
当時ムシュブフ氏はパリ北の郊外のアニエール・シュル・セーヌという街にアパートを借りたのですが、このアパートの建築工事が遅れたため、ムシュブフ氏一家(ムシュブフ氏夫婦と息子と娘の4人家族)は氏の母親が校長を務めるフォントネー・スー・ボアの学校の教員宿舎に滞在していたのです。
1947年の秋に建築工事が終わり、一家がアニエール・シュル・セーヌに移った時、ピアノも一緒に運ばれました。
1950年3月ムシュブフ家の引越しに伴い、ピアノはランド県(ボルドーから160km南)に移されました。
その後、ランド県内の2軒の家で1991年まで家族にたくさん弾かれました。
1991年ムシュブフ家の引越しに伴い、ピアノはトゥール(アンドル・エ・ロワール県)に移されました。
ピアノを購入したムシュブフ氏と奥さんが亡くなり、娘さんが家とピアノを引き継ぎました。
2015年に娘さんが亡くなり、2016年トゥールの家が売却される際、ピアノはパリのピアノバルロンに運ばれました。
最後に相続した息子さんから私がピアノを購入し、2017年にピアノは日本へ飛びました。
そして2018年から2019年にかけて北軽井沢で修復され、今新たな人生を歩みだそうとしています。

ピアノは、フランス国内でたくさんの移動を経験してきました(その証拠に外装の傷が多いです)が、生まれてからずっと同じ家族の元で過ごしました。
ムシュブフ家が何度も引越をしてきた中で一度もピアノを手放さず、ずっと一緒に移動したのは、このピアノが家族に愛されていたからだと思います。

私がフランスで過ごした10年半の間、最初から最後までずっとお世話になったのがこのムシュブフ家の息子さんでした。
彼は、私に多くのフランス文化を学ばせてくれた方で、フランス中様々な地域に連れて行って文化遺産を見せてくれたり、様々な地方のフランス料理を食べさせてくれたり、たくさんのクラッシックレコードをくださったり、コンサートやオペラ、バレエにも連れて行ってくれました。
それらの経験から私が得たものは計り知れず、深く感謝しています。
ご両親と妹さんの思い出のピアノを売りに出すことにしたものの、フランスでは珍しくもないガヴォーの古い小さなピアノは今は全く売れないので処分になるところだったのですが、私はご恩返しのつもりで買取りました。
日本でなら、小さなフランスピアノも気に入ってくれる方がいるかもしれないと思ったからです。
まだ行き先は決まりませんが、いつかきっと新しい所有者が現れ、新しい人生の始まりが来ると思っています。
修復が完成し、音色を録音してフランスのムシュブフ氏に聴いてもらったところ、癌で闘病中の氏が大変喜んでくれました。
家族のピアノが日本の家で歌い続けてくれると思うととても慰められる、という言葉をいただき、本当に修復して良かったと思っています。


1945年製GAVEAU  モデル・クラポー(ベビーグランド)
製造:1945年フランス(パリ)
製造番号:97420
構造:交差弦・総鉄骨
寸法:1m33
鍵盤:88鍵(プラスティック / 黒檀)
アクション:シュワンダー
外装:ローズウッド・シカモア / ワックス仕上げ

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