2017年5月15日月曜日

1925年製ガヴォー モデル1 修復を終えて

1925年製GAVEAU モデル1 (1m52)
修復を無事に終えることができ、少しほっとしています。
ガヴォーのピアノは日本ではあまり知られていませんが、フランスではプレイエル、エラールと並ぶ昔の三大メーカーとしてよく知られ、私もフランスにいた10年間で多くのガヴォーに出会いました。
修復もかなりの台数を経験しましたし、またお客様宅での調律やアクション調整もたくさんして、私にとってはとても馴染みのあるピアノです。
構造的にも良く知っているピアノですから、修復にあたり心配は少なかったのですが、ピン板交換を含めた全ての修復を自分一人で行うのは初めてでしたし、緊張した場面は多く、何とか無事に乗り切ることができた今、感慨深い気持ちです。

今回の修復で初めて挑戦してとても多くを学んだことが3つありました。
一つ目はピン板交換で、これは近所の木工職人の方の協力を得て実現できたことなので、自分一人でやったわけではありませんが、失敗は許されないと思い色々なことを考えながら作り上げたことは、大きな経験となりました。
このピアノの古いピン板は、まだなんとかギリギリ使える状態でしたので作り替えるかどうか迷いましたが、やはり新しくして良かったと思っています。今後の寿命を保証できますし、調律も安定しやすく、安心感があります。
二つ目の挑戦は、鉄骨に塗る塗料に自然塗料を試したことです。
私の仕事場がある北軽井沢の山の環境での生活は、良い空気を吸って、山で採れる山菜やきのこを食べ、鳥のさえずりや山の風景に癒される毎日、と大変恵まれています。
そんなところで仕事をしていると、体に悪いガスを出したり手が荒れる薬品や塗料を使う気持ちがしなくなってきて、なんとか体に優しい塗料を使えないものかと調べたところ、金属にも塗れる自然塗料(ドイツ製)があることがわかり、ピアノに使った例はないかもしれませんが、試してみたわけです。
結果は、刷毛塗りですから多少塗り跡がまだらですが、それほど気にならない程度にまとまりましたし、長期的にも多分問題はないだろうと思われるので、満足しています。
仕事をしていても有毒な臭いは全く出ませんし、手も荒れませんので、快適でした。
今後もこの塗料を継続したい気持ちです。
三つ目の挑戦は、外装をワックス塗りにしたことです。
これはパリの工房では多く見てきた仕事ですが、自分で全部をやったのは初めてでした。
作業は大変でしたが、ワックスを擦り込んだ後の木目の美しさには感動し、苦労が報われました。
ニスのような光沢がないので落ち着いた仕上がりですが、昔の職人の寄木細工の奥深さも感じられるピアノに仕上がったと思っています。
ちなみにワックスはフランス製、Carnauba(カルナバ、ブラジルロウヤシ)をベースに作られたもので、こちらも体に優しい自然のものです。

音色については、ガヴォーの性格がよく出ましたし、小さいけれど表現力豊かなピアノになりました。
プレイエルのような色っぽさはガヴォーにはありません。明るくピュアで爽やかな音色です。
私の個人的な印象なのですが、エラールは歳を重ねた貫禄と気品のあるグラン・メール(おばあさん)、プレイエルは豊かな人生を経験したマダム、ガヴォーは明るく純粋で可愛いマドモアゼル、という感じです。
今回のガヴォーも、爽やかなマドモアゼルが出来たなあ、と思っているところです。
フランスでもガヴォーは一番庶民的で、広く愛されるメーカーでした。
老舗のエラールやプレイエルに比べて敷居が低く、値段も比較的買いやすいものだったようです。
私のガヴォーも皆様に愛されるピアノとして再出発して欲しいなと思っています。






ピアノ:ガヴォー モデル1
製造:1925年フランス(パリ)
製造番号:79582
構造:交叉弦 / 総鉄骨
寸法:1m52
鍵盤:88鍵(象牙/黒檀)
アクション:シュワンダー

外装:ローズウッド / 太陽のモチーフの寄木細工

長所:ピン板を新しくしたので、丈夫で将来の寿命が長い
音色の特徴:ピュアなサウンドと温かく深みのある低音

販売価格:260万円+消費税8%+群馬県北軽井沢からご自宅までの運送費
群馬県北軽井沢にて試弾できます。
お問い合わせ:pianoakiko2011@gmail.com / 080-2336-6863

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